吉野製材ツアー

先日、吉野の製材体験ツアーに参加する機会がありました。
吉野まで、車で約40分、私の所属する橿原本社から近いのもあって、家具の材料や、枠材、床材などを選びにちょくちょく製材所には足を運びます。
 今回は日本でも高級とされる杉・桧の植林地吉野の伐採から製材までの工程の現場を報告させていただきます。
1.丸太の伐採
吉野の木材は地形、気候にめぐまれ、手入れが出来た木は年輪が詰まっていて、心材が真ん中にある良材として知られている。
種は優良な木に登って種子を採取するの専門の職人さんがいらっしゃるそうです。
伺った造林は杉と桧の混色法らしく谷は杉(水分、湿気を好む)、尾根は桧(水を嫌う、根が浅い)に植林するそうです。
代々に渡って植林・間伐を繰り返す。
まっすぐな木にするための枝打ち(20年~30年ごと)した枝や葉、切り株も土へもどる。=肥料になる。
木を倒す方向を定めるのは長年の職人さんの勘、あらかじめ木を寝かせる方向に台をカット、太いロープの輪を木の天辺に引っ掛けて準備完了、鋸をいれると高い木と木の間に30m近い木が見事に倒れていく。カッコイイ!!直径約40センチ推定樹齢100年。(子供と行けば年輪を数える根気があったかも…)
伐採直後の根元からは今まで吸っていた水分がにじみ出てきた。生きてると実感。

2伐倒木、葉枯らし・・・乾燥を早める、杉の赤身(タンニン成分)を綺麗に出すため、所々皮をはぐ約1年寝かせる(乾燥させる)樹齢によって期間がちがうそうです。
 ちなみに木は2度生きるらしいです。樹齢100年の木は建築後その倍生きるらしいです。つまり200年・・・。

3吉野桧専門の製材所にて
約1年寝かせた丸太の原木の皮を専用の彫刻刀のごっつい?ような道具をつかって手で勢いよくはぐ。(つるつるにするのです)
 桧にもやにor灰汁が出てきました。
桧の皮は神社仏閣で見かける屋根の材料、桧皮葺きや昔は屋根の防水下地材としても利用されていたそうです。

4木取り作業
 製材所ではは構造材から造作材、下地材まで多品種の物を一品一品製材します。製品にする時に「鋸を入れると木は曲がる」ということを、あらかじめ考えながら、挽くそうです。その挽き方によっては、取れる予定の製品が取れなくなることもあります。まさに木は生きています。丸太の背と腹、あて、節の浅い深いを良く見て木取りをするのはまさにここでも熟練した職人さんの業。私も製材機を体験ゆっくり丸太にそって機械を動かすのです。木取りで綺麗な柾目の通った廻り縁、鴨居、長押、天井材や造作材・・・最後に芯有の正角の柱材がとれます。製材所の印象はオートメーションの工場というより、人の手を介して大事に育てられた木を大事に仕上げ、嫁に出すっていう感じでした。 この時点で含水率(木材に含まれる水分の割合)13%~30%が計測されました。
それからまた製材所で約1年ほど自然乾燥するそうです。
 私には最初同じ姿に見えた2本の丸太が柱になったとき、ひとつはきれいな目の通った少しピンク色した特上の柱が出てきて、もうひとつの柱は節だらけの丈夫そうな1等材になりました。 
不思議???質問「切ってみないとわからなければ、リスクが大きいのでは?」
「最初からわかっていますよ、ひとつは誰々さんの林の木かということです。
造林ですから、手入れをして枝打ちなどしている林かどうか出所でまず判断、
それから木を見れば大体わかる。」そうで「柱をメインにしているのではなく、
まわりから取る造作材が主です。」とのこと、素人ではわからないですね。。。
木を見ることも職人技なのですね。

5製材市場・・・柱や化粧材や、大工さんや建具屋さんが加工するまえの市場、杉と桧専門。1番すばらしいとされている杉の赤味とはどれぞやと教えていただいたのですが、これといわれ、なるほどと言い・・・多分置き場所変えたらもう探せなくなるだろうと確信。でもしっかりと目に焼き付けたつもりではあります。候ご期待。

そこには、時間がゆっくりじっくり流れている
何百年、何代にも渡って森を管理し、植林を重ね、大切に大切に製品として世に出していく壮大なスケールの工程がありました。ちっぽけな私も最後の形にするという過程に参画していると自負できるデザイナーになりたいと心に響いた1日でした。
これぞサステイナブル(「持続可能な」という意味。将来の環境や次世代の利益を損なわない範囲内で社会発展を進めようとする理念。)計画のもとに環境共生。
増改築などで、通常より少々予算が高くつくかもしれまんが、次の世代まで活かせる無垢材でのご計画はいかがでしょう。長い目で見ればけっして高くない買い物になるのでは…?
造林の木洩れ日のなかで食すお弁当は最高でした。今度は、皆さんがご家族で体験できるツアーを企画してみます。   
篠田 三起子